FAGA(女性型脱毛症)とは?
FAGA(Female Androgenetic Alopecia)は、女性にみられる進行性の薄毛です。頭頂部~分け目の毛量が少しずつ減る・全体にボリュームが落ちるといった経過をとることが多く、前髪の生え際は比較的保たれやすいのが特徴です。年代を問わず起こりえますが、閉経前後で増える傾向が知られています。
原因は一つではなく複合的と考えられています。アンドロゲン(とくにDHT)とエストロゲンの関与、毛包の感受性(遺伝的素因)、年齢に伴う変化、生活背景などが重なり合って発症・進行します。
院長見解としては、女性でも最終的な共通経路としてDHTが関わっていることが少なくない一方、エストロゲンの低下が背景要因として働きうる点にも注意が必要と考えています。なお血中のDHT値は毛包内のDHTを反映しないため、採血だけで病態を判断できないことがあります。
FAGAの主な要因(複合的に関与)
下記の要因が単独または重なってFAGAの発症・進行に関与すると考えられています。
(原因は完全には解明されておらず、個人差があります)
1. アンドロゲン(DHT)感受性
テストステロンから5α還元酵素により生成されるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛包の受容体に結合すると、成長期が短縮し毛髪が細く短くなります。女性ではアンドロゲンが高くない方でも毛包内の局所DHTが関与している可能性があり、血液検査では評価しきれないことがあります。
2. エストロゲン低下・ホルモンバランスの変化
エストロゲンはヘアサイクルの維持に好影響を与えるとされ、閉経前後の低下や相対的なアンドロゲン優位が、薄毛傾向に関与することがあります。エストロゲン‐アンドロゲン系の変化は、FAGAの背景要因の一つと考えられています。
3. 遺伝的素因・毛包の個体差
家族内に類似の薄毛パターンがみられることがあり、毛包がアンドロゲンに反応しやすい体質など、遺伝的要素が関与します。単一遺伝子ではなく、複数の因子が合わさる多因子性と考えられています。
4. 生活背景・体調の影響
睡眠不足・栄養バランスの偏り・慢性ストレスなどは頭皮環境やヘアサイクルに悪影響を及ぼしうるため、悪化要因として整える価値があります。ただし生活改善のみで進行が止まるわけではないため、適切な医療的介入の併用が重要です。
FAGAのよくある見え方(進行パターン)
※上図は女性型脱毛症(FAGA)の一般的な進行イメージです。
女性では男性型と異なり、生え際の後退よりも頭頂部や分け目の毛量減少が主体です。
Ludwig分類・Sinclair分類などで進行度を評価しますが、個人差が大きく、早期の段階でも進行する可能性があります。
「少しボリュームが減ってきたかも」と感じた時点で、医師にご相談いただくことをおすすめします。
出典:Ludwig E. (1977), Sinclair R. (2005) 等の分類をもとに当院作成
女性では、分け目が広がる/頭頂部のスカスカ感が目立ちやすく(Ludwig型・Sinclair分類など)、男性のような前頭生え際の明確な後退は相対的に少ない傾向です。日本人でも頭頂~分け目周辺の密度低下を自覚しやすい方が多くみられます。
主な自覚症状の例
・分け目が以前より広く見える
・頭頂部の地肌が透けやすい/髪のボリュームダウン
・髪が細く短くなってスタイリングが決まりにくい
ヘアサイクルとFAGA
髪は「成長期 → 退行期 → 休止期」を繰り返します。FAGAでは毛包がアンドロゲンに反応して成長期が短縮し、太い毛へ育つ前に抜け替わるサイクルが増えるため、徐々に細く短い毛が目立つようになります。
生活改善だけで止めるのは難しい理由
FAGAは毛包レベルのホルモン応答や毛包の感受性が深く関わるため、生活改善は重要な土台ではあるものの、それ単独で進行を止めることは難しいのが一般的です。
科学的に一定の効果が示されているのは、アンドロゲン経路の調整(例:スピロノラクトン等の抗アンドロゲン)やミノキシジルなどの医療的アプローチです。妊娠を希望する方や既往のある方では使用可否が異なるため、医師と相談のうえ個別最適化が必要です。
早期の相談・治療開始が大切
毛包がミニチュア化しても適切な治療で回復余地が残ることがありますが、長期間放置すると反応性が乏しくなることがあります。
「最近ボリュームが戻りづらい」「分け目が広がってきたかも」と感じた段階で、早めに専門医へご相談ください。